「男の人とお食事だけをして、お金をもらえるサービスがあるんだよ!」
「え?なにそれ??」
それは、本当に何気ないユミとの会話だった。
「それってHなやつなんじゃないの?なんか危ないやつ!」
思わず私は、聞き返してしまった。
だって、ご飯を食べるだけでお金がもらえるだなんて、そんな美味しい話があるわけがない。
「違う違う!ほらパパ活とかって変な人が来たり、怖い思いする事があるっていうじゃん。でも、これはちゃんとしたお店を通しての仕事だから、何かあったら助けてもらえるんだよ!全然安心だし、そう思ったら、おいしくない??」
「えー??でも知らない人と二人きりのご飯なんて、何話していいかわかんないし。。」
当時私は大学の2回生。
成人したとはいえ、男性との交際経験は多い方ではなかった。
確かにお食事だけをして、お小遣いが貰えたら・・それは嬉しいに決まっているけど、ユミの説明だけではまだ少し不安だった。
「大丈夫、大丈夫!私と二人で行こうよ!!それなら安心でしょ??」
「え?一緒に行けるの??なら・・大丈夫かな??」
「じゃあとりあえず、登録だけ澄ましちゃお!」
そう言うと、ユミは私にサイトのURLを送って来た。
「ふうん、なんか可愛いサイトだね、これ。」
「そうそう、すぐ登録できるから今しちゃいなよ!!」
そんな軽い流れで、私はユミに言われるがまま登録を進めた。
名前を入れて、プロフィールを入れて、一言アピールを入れて・・と。
それは普通の出会い系となんら変わりのない簡単な作業で、私は少し構えていただけに、拍子抜けしまった。
こんなのでいいの??面接とかはないのかな??
「ねぇ、なんか写真がいるみたい」
入力を進めていくと、顔写真の入力を促すチャートに来た。顔を出すのは少し抵抗があったから、そう恐る恐るユミに尋ねれば
「麻沙美は可愛いから、マスクしてこのまま撮れば大丈夫だよ!!撮ってあげるよ!」
そう言ってパシャリと私を映してくれた。
「うん、可愛い!これならバッチリだよ!!」
そう微笑むユミの方が、ふんわり巻き髪にぱっちりお目目。お人形さんみたいに細いウェストの、とってもかわいらしい女の子だ。男の子からの人気も高いし。
それに比べて私は、黒髪ストレートの古風なタイプ。ユミの事は好きだけど、華やかで社交的なユミと一緒にいると、なんだか自分に劣等感を抱いちゃって・・どうしても自信が持てなくなっちゃう。
「私ユミみたいに可愛くないけど、大丈夫かな??」
「麻沙美は自分の魅力に気づいてないのが、ダメなところだよ!こんなに白くて、こんなに大和ナデシコで、なのにこのスタイル!!反則女子だよーww」
ユミは笑いながらそういってくれたけど、やっぱり自信がない。
「初めてのギャラ飲みの相手は、私が決めてもいい?」
「うん、ユミに任せるね!!私今から講義だから、後でまた詳しく教えて!!」
気づけばもう講義開始は5分後に迫っていた!!私は慌てて教室に向かっていった。
その時間が退屈な内容の講義だったから、よけいにというのもあるかもしれないけど、正直内容はあまり頭に入ってこなかった。
出会い系より安全で、お金ももらえるって・・【ギャラ飲み】って一体どんなんだろう?
最悪、変な人が来ても、まぁお金貰ってるって思ったら許せるかな?
今月新しいワンピ欲しかったし、何かの足しになればいいなぁ♡
そんな物欲につられた思いが、時間いっぱいに頭の中をグルグルしていた。
[麻沙美、講義終わったら連絡して~♪]
ラインのメッセージを見て、急いでユミに返事を送る。さっきの話の続きも聞きたかったし、丁度良かった。
会って話そうというユミと、いつものカフェで待ち合わせようという事になった。
「麻沙美!!早く早く!!」
カフェの奥で手招きするユミ。なんだか慌てているみたい。
「どうしたの?何かあった??」
私は少し心配になって足早に駆け寄る。
「麻沙美、この後何かある??」
「ううん、ないよ?」
「さっき登録した【ギャラ飲み】、今日行ってみない??」
ちょっと想像もしていなかった突然の提案に、私は一瞬フリーズしてしまう!
「え?急すぎない??」
あまりの展開の早さに驚いちゃったけど、まあこの後の時間はたっぷりある。
講義の時間中めいいっぱいに考えて、欲しいものまで定めていた私は、すっかり乗り気になってしまっていたw
「え?しかも服とか、こんななんでもないワンピでいいの?」
「え?めっちゃ可愛いし大丈夫だよ」
ユミは携帯を操作しながら、軽く返事を返した。
多分私が断らない事まで予想していたんだと思う。
本当に大丈夫なの??とまだ少しの不安はあったけど、ユミも一緒だし、服も大丈夫って言ってくれたし(あんまり見てないけどw)、まぁいいかと変に納得してしまう。
「よしっっ!!成立!!」
ものの5分もたたないうちにユミはそう言うと、凄い笑顔で私を見てきた。
「今から表参道行くよ!30分後待ち合わせだから、ちょっと急ごう!!」
そう言うと、ユミはスクッと立ち上がった。
「今日はね、50代のおっさんとお茶ね!時間は1時間。」
「え?50代??」
私は、自分の父親のような年齢のおじさんとお茶だなんて、正直ちょっと気持ち悪いって思ってしまいました。そんな気持ちが顔にでちゃっていたのか?ユミがすかさず言葉を続けます。
「お茶だし、1時間だし、ニコニコしとけばすぐ終わるから大丈夫!!私の横でチョコンと座っときな!!」
そう言いながらカツカツ歩くユミがなんだか変に頼もしく見えて、私は「う、うん。」と返事をしながら必死でついて行った。
「ここだ」
そう言ってユミが足を止めたのは、路面に面したお洒落なガーデンカフェ。
表の看板には、【アフタヌーンティ¥5500~】なんて高そうな看板があった。
「ねぇ、本当に大丈夫??」
「大丈夫大丈夫。私達はお金もらう方だから!なんにも払うことないし!!」
そう言うとユミは携帯に目を落としながら店の奥へズンズン進んでいく。
「あ、あの奥の人だ。無理にしゃべらなくていいいけど、ニコニコしててね」
そう小声で私に言うと、ユミは奧の席に向かって歩き出す。
そこには、Theおじさんといった感じの男性が2人座っていた。
「ユミちゃん、麻沙美ちゃん、今日はありがとう!!いやぁ可愛いね、ほら奧座って!!」
白髪まじりで中年太りしたおじさんがそう手招きをしてそう言った。
「僕が田尻で、こっちが大橋。今日はよろしくね!」
そう紹介された大橋さんは、田尻さんよりは少し年下のような気もしたが、少しハゲている、こちらもおじさん。
二人とも無難な配色のスーツは着ているけど、白髪にハゲ、そしてぽっちゃり中年太り。こんなお洒落なお店に不釣り合いなおじさん達と、明らかに若い私達。途端に何かいけない事をしているような気になってしまって俯いた私に、田尻さんが話かけてきた。
「ここ、アフタヌーンティが有名なんだ!!一度来てみたかったけど、おじさん二人じゃかっこ悪いだろ?だからこんな可愛い二人が来てくれて助かったよ!!紅茶にする?コーヒーにする?」
とっても優しい笑顔で尋ねてくる。
「じゃああったかい紅茶で!!」
「私も」
ユミに続いて、私も慌ててそう答える。
「今日は嫌な事は嫌って言ってくれていいからね!無理しないで、僕らこんなおじさんだし。美味しい物を食べて、楽しんで帰ってね!」
今度は大橋さんが私にこう伝えてくれた。
多分緊張している私に気をつかってくれているんだ、と思ったら・・なんだか嫌なイメージが少し薄れていく気がした。
しばらくすると、大きなケーキスタンドと共に、飲み物が運ばれてきた!!
50cmはあろうかというそのケーキスタンドには、色とりどりのケーキやスコーン、フルーツサンドにスイーツ、数えきれないくらいたくさん乗っている。
「わ・・ぁ・・!!」
ユミも目をまん丸にして見つめている。
こんなに大きくて可愛いケーキスタンドなんて、インスタでも中々見た事がない!
あっけにとられている私達に向かって
「ほらほら好きなものは2つでも3つでも食べていいよ!喧嘩しないでね!!」
そう笑いながら田尻さんが促してくださる。
私とユミは「いただきまーす♡」と可愛らしい声を出すと、イチゴが乗ったケーキに手を伸ばした。
次はスコーン!その後はフルーツサンド!目の前のおとぎ話のようなスィーツに夢中になりながらも、おじさん達からの話には適当に相槌を打ちながら、アフタヌーンティをひとしきり楽しんだ。
ふと見れば、私の横で、ユミも同じように幸せそうな顔をしていた。
「二人は仲良しなの?」
ふいに、田尻さんがそう尋ねた。
「はい、同じ大学で。一緒にいる事が多いです。」
ユミが答える。
「何を勉強してるの?」
「経済です。」
次は大橋さんからの質問だったけど、これもユミが答えてくれる。
「そうかぁ、偉いね!将来の夢とかはあるの?」
「まだ決めてないけど、金融関係に就職できたらいいなーって思ってて」
ユミがそう言うと、間髪いれずに大橋さんが口を開く。
「おい、田尻!お前力になれるんじゃないか?」
何のことかわからず、ポカーンとしていた私達に、田尻さんが口を開いた。
「いや、僕は詳しくは言えないけど、金融機関の端くれの会社で人事をしていたこともあるからね。何か聞きたい事があれば話すことはできるかな?」
「おいおい何が端くれだ!!日本の主要な大手金融機関じゃないか!!」
「大橋さん、頼むよ!!仕事をさぼってきている手前、大きな声では言えないから、そこはごめんね!!」
まるで漫才のような掛け合いに、私も笑ってしまう。
「就職活動までに、証券外務員の資格をとるといいよ。」
そこから田尻さんは、銀行に就職するときの話や、合格してからの話をとてもわかりやすくしてくれた。
学校はおろか、先輩からも聞けない情報に、私達は釘付けになっていた。
「それで、一人前になったら、こういう大橋さんみたいな大社長ともお付き合いして頂けるんだよ!」
「おい、やめろよ!俺の方がおんぶにだっこで、お世話になっているほうなんだから。」
ガハハハハとおじさん二人は笑っていた。
最初はちょっと気持ち悪いおじさんだな・・と思っていたけど、こんなにオシャレなカフェでスマートにスィーツをご馳走してくれて、しかもなんだか大手企業の偉い人と社長さんみたいだし。
私はすっかりおじさん2人を見る目が変わっていた。
「そろそろ時間かもしれない」
そんな時、ユミがポツリと呟いた。
「おぉ、それはいけないね!!二人が可愛いから、本当に時間があっという間だったよ!!」
田尻さんはそう言うと、そっと紙袋を2つ取り出した。
「これお土産だから、家でみんなで食べるといいよ!」
「わぁ♡いいんですか?」
予期しなかったプレゼントに、私とユミは驚きながらも、そっと受け取る。
「僕たちはここでもう少しコーヒーを飲んでいくから、先に帰りなさい。気をつけて帰るんだよ!」
「ありがとう、ユミちゃん、麻沙美ちゃん!今度は、食事にお誘いしてもいいかな?」
そう笑顔で言う大橋さんに
「はい!」
と元気よく答え、私達は店を後にした。
少しお店から離れたところで、ユミが口を開く。
「麻沙美、どうだった??」
「めっちゃおいしかったし、いいおじさんだったね!!」
最初に抱いていた不安も、おじさんに対する嫌悪感も、すっかりどこかに行っていた私は、自然と笑っていた。
「確かにいいおじさんだったね!!しかも、この一時間で5000円も貰えたんだよ!」
「え?うそ、そんなに?」
「まぁ、私が交渉したっていうのもあるけどね!!」
「ユミ、すごーい!!ありがとうー!!」
私は思わずユミに抱き着いた。
「また一緒にギャラ飲み行こうよ!!」
そう言ったユミに、私は食い気味に
「うん♡」
と答えた。
初めての体験は新鮮で楽しかったし、思わぬ高収入も入ったし、私はウキウキで帰路についた。
「田尻、お前どっちがいい?」
「僕はユミちゃんですかね?楽しめそうですし。大橋さん、麻沙美ちゃんが気に入ったんじゃないですか?」
まるで悪代官と越後谷が密談するかのように、男達は静かに話していた。
「よくわかってるな。来週末くらい、いつもの料亭でどうだ?空いてるか?」
「あの子達の都合次第ですけど、お店は大丈夫ですよ。手配しておきます。」
「ちょっと長めに頼む。両方ともいきたくなった時のためにな。」
「ははは、そうしたら僕はお預けじゃないですか。」
田尻は苦笑いをしながらそう言った。
「ちゃんと俺の後にまわしてやるよ。」
「頼みますよ」
そして、また静かに二人、笑みをこぼした。

わー!!料亭ってなんですか?
どうなるんですか??

(´∀`*)ウフフ
それは次話の料亭編をお楽しみに!
乱れますよ~!!

僕もこんな女の子、呼びたいです!!

話中にも出てきた【ギャラ飲みサービス】
気になりますよね!!
詳しく解説した記事もあるので、ぜひチェックしてみてね♡



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